法人設立を検討する際の注意点(社会保険料編)

会社設立イメージ

個人事業主から法人に形態を変える場合(いわゆる法人成り)、社会保険料の負担は思った以上に大きいものです。

法人形態の方が個人より節税幅が大きいからといって安易に法人成りすると、のちのち、社会保険料の負担で後悔する事にもなりかねないので、これを機にぜひ社会保険の負担についてしっかり理解しておきましょう。

社会保険制度について

社会保険制度は公的な費用負担により、国民の生活を保障するために設けられた保険制度の総称を言います。
具体的には「医療保険」「介護保険」「年金保険」「雇用保険」「労災保険」の5つを指します。
なお、上記5つは広義の社会保険と解釈されておりますが、給与計算上は「医療保険」「介護保険」「年金保険」の3つを狭義の社会保険とし、「雇用保険」「労災保険」の2つを労働保険としております。
今回は、狭義の社会保険である「医療保険」「介護保険」「年金保険」を中心に解説します。
なお、介護保険は40歳以上(厳密には40歳以上65歳未満)の方が加入対象となりますが、今回のシミュレーションでは介護保険は対象外とさせていただきます。

なお、保険の種類をまとめると以下の通りとなります。

広義の社会保険 医療保険 狭義の社会保険
介護保険
年金保険
雇用保険 労働保険
労災保険

個人事業主が加入する社会保険

医療保険について

個人事業主の場合は各市町村が管理管轄となっている「国民健康保険」に加入することが一般的です。
国民健康保険は、市町村により計算方法は異なりますが、ざっくり前年度の総所得金額に応じて負担割合が変わります(上限あり)。
なお、会社勤めを辞めて個人事業主になった場合には、退職した会社で加入していた健康保険を最長2年任意継続することも可能となります(会社勤めの場合は健康保険料の負担は会社と折半ですが任意継続した場合は個人で全額負担となるので注意が必要です)。

年金保険について

年金保険には、第1号被保険者・第2号被保険者・第3号被保険者の3種類がありますが、個人事業主の場合は、第1号被保険者に該当する「国民年金」の対象となります。
国民年金の負担は所得の大小に関わらずに月額一律16,340円です。

法人が加入する社会保険

医療保険について

法人の場合は、全国健康保険協会や健康保険組合といった団体が運営する「健康保険」に加入することになります。
健康保険は加入する団体により多少の誤差はあるものの、標準月額給与に一定の利率を掛けた数値が毎月の健康保険料となります。
なお、会社員の場合は保険料の半分を会社に負担してもらえます。

年金保険について

年金保険には、第1号被保険者・第2号被保険者・第3号被保険者の3種類がありますが、法人の場合は、第2号被保険者に該当する「厚生年金」に加入する必要があります。
厚生年金は健康保険同様に、標準月額給与に一定の利率を掛けた数値により月々の年金保険料を算出します。
なお、会社員であればこちらも会社と折半となります。

社会保険料のシミュレーション(個人事業主VS法人)

計算の前提

今回はあくまで個人で事業を行っている事業主が法人成りを考えるという前提を置いているため、個人の場合も法人の場合も1人社長を想定しています。
なお、個人事業主の場合と法人の場合では計算方法が異なるため、厳密には様々な仮定をおく必要がありますが、今回はあくまでシミュレーションなので前提を簡素化しています。

【前提】
埼玉県さいたま市在住
35歳独身
年収…517.5万円
給与所得…360万円(年収から給与所得控除を差し引いたものを給与所得という)

個人事業主の場合

個人事業主の健康保険料

国民健康保険は所得割と均等割の2種類があり、計算方法は以下の通りです。
①所得割:国保加入者全員の課税標準所得※1×所得割税率※2
※1…課税標準所得は年収から給与所得控除を差し引いて算出する(年収ではなく給与所得控除後の金額になることに注意)
※2…医療分7.51%、支援分2.11%、介護分2.02%(介護分は40歳以上が対象)

②均等割:国保加入者の人数×均等割額

1.課税標準所得額
360万円―33万円=327万円

2.所得割分
327万円×9.62%(医療分7.51%+支援分2.11%)=314,574円→314,500円(100円未満切捨)

3.均等割分
29,500円(医療分)+8,500円(支援分)=38,000円

4.合計
314,500円+38,000円=352,500円

個人事業主の年金保険

個人事業主の年金保険料は一律月々16,540円(令和2年度)なので、年間では198,480円(16,540円×12か月)となります。

個人事業主の年間保険料

550,980円=352,500円(健康保険料)+198,480円(年金保険料)

法人の場合

法人の場合は給与収入をベースに「標準報酬月額」を算出し、それに基づいて健康保険料及び社会保険料を計算するため、個人事業主の場合より計算は単純である(健康保険料は9.81%、厚生年金保険料は18.3%となる)。
会社員の場合は会社と折半で保険料を負担するが、今回は自分で会社を経営しているため、全額が自分負担となる。
標準報酬月額には給与収入以外に勤務地手当や通勤手当を含めるが今回は話を単純化するため、「年収÷12=標準月額報酬」とする。

標準月額報酬の算出

5,175,000円÷12ヵ月=431,250円
月収が431,250円の場合の標準月額報酬は440,000円となる。

法人の健康保険料

月額…440,000円×9.81%=43,164円
年間…43,164円×12ヵ月=517,968円

法人の年金保険

月額…440,000円×18.3%=80,520円
年間…80,520円×12ヵ月=966,240円

法人の年間保険料

1,484,208円=517,968円(健康保険料)+966,240円(年金保険料)

まとめ

いかがでしょうか。
今回の例でいうと、個人事業主の場合は年間の負担額が550,980円に対して法人の場合は1,484,208円と3倍近くの負担割合となっています。
年金保険は将来戻ってくるものだとしても、資金繰りには大きなインパクトがあるといえるので、その点も考慮したうえで法人成りを検討するのがいいといえます。