新設法人に必要な届出書類とは?会社設立後の手続き・期限を税理士が解説
目次
会社を設立した後は、登記が終わればすべての手続きが完了するわけではありません。
税務署や都道府県・市区町村、年金事務所などに、さまざまな届出を行う必要があります。
❓ 会社設立直後の経営者からよくいただくご相談
- 会社を作ったけれど、税務署に何を提出すればいいか分からない
- 青色申告の届出はいつまでに出せばいいの?
- 一人社長でも社会保険の手続きは必要?
- 従業員を雇った場合は、さらに何か届出が必要?
会社設立後の届出には期限が決められているものもあり、提出が遅れると税制上の優遇が受けられなくなるなど不利益が生じる場合があります。
この記事では、新設法人が会社設立後に行う主な届出と提出期限について、税理士が分かりやすく解説します。
新設法人が行う主な手続きは4種類
法人を設立した後の手続きは、大きく分けると次の4種類です。
- 税務署への届出
- 都道府県・市区町村への届出
- 年金事務所(社会保険)への届出
- 労働基準監督署・ハローワーク(労働保険・雇用保険)への届出 ※従業員を雇う場合
ただし、すべての会社で全く同じ手続きが必要になるわけではありません。
役員報酬を支給するか、従業員を雇うか、資本金はいくらか、インボイス登録をするかなどによって必要な手続きは変わります。
まずは、多くの新設法人に関係する「税務署への届出」から確認していきましょう。
税務署に提出する主な届出書
① 法人設立届出書
法人を設立した場合は、原則として法人設立の日から2か月以内に「法人設立届出書」を納税地の所轄税務署へ提出します。
例えば、2026年8月1日に会社を設立した場合は、原則として2026年10月1日までが提出期限となります。
📋 法人設立届出書に記載する主な情報
- 会社名 / 本店所在地 / 代表者
- 資本金 / 事業年度 / 事業目的 など
会社を設立したら、まず確認しておきたい基本的な届出です。
② 青色申告の承認申請書
新設法人で特に忘れないようにしたいのが、「青色申告の承認申請書」です。
設立第1期目から青色申告を行う場合、原則として次のうちいずれか早い日の前日までに提出します。
- 会社設立の日から3か月を経過した日
- 第1期の事業年度終了日
📅 提出期限の具体例
- 会社設立日:2026年8月1日
- 決算日:2027年7月31日(第1期が12か月)
- 👉 提出期限:2026年10月31日
一方、第1期を短く設定している場合には、それより早く期限が到来することがあります。
青色申告には、一定の要件のもとで「赤字(欠損金)を翌期以降に繰り越せる」などの非常に大きな税制上のメリットがあります。
「決算までに提出すればいい」と考えていると期限を過ぎてしまい、初年度に青色申告の特典を受けられなくなります。会社設立後なるべく早めに提出しておくことを強くおすすめします。
役員報酬や給与を支払う場合の届出
① 給与支払事務所等の開設届出書
社長に役員報酬を支払う場合や、従業員に給与を支払う場合には、原則として「給与支払事務所等の開設届出書」を提出します。
提出期限は、原則として給与支払事務所等を開設した日から1か月以内です。
ここで一人社長の方に注意していただきたい点があります。
「従業員がいないから給与関係の届出は必要ない」というわけではありません。社長自身に役員報酬を支給する場合には、会社から給与を支払うことになります。そのため、源泉所得税の計算や納付についても確認しておく必要があります。
② 源泉所得税の納期の特例
一人社長や小規模法人であれば、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も検討しておくとよいでしょう。
給与等の支給人員が常時10人未満の場合、申請することによって給与等から源泉徴収した所得税の納付を(原則の毎月から)年2回にまとめることができます。
📌 納期の特例を利用した場合の納期限
- 1月~6月に源泉徴収した所得税:7月10日まで
- 7月~12月に源泉徴収した所得税:翌年1月20日まで
毎月の納付作業や振込の手間を大幅に減らすことができるため、小規模法人では非常に多く利用されている制度です。
都道府県・市区町村にも法人設立の届出が必要
法人が納める税金は、国に納める法人税だけではありません。
法人住民税や法人事業税などの地方税もあるため、会社設立後は原則として、
- 都道府県税事務所
- 市区町村役場
にも法人設立に関する届出を行います。
届出書の名称や提出期限、必要となる添付書類(登記事項証明書や定款のコピーなど)は自治体によって異なります。本店所在地を管轄する都道府県・市区町村のホームページ等で事前に確認しましょう。
※東京23区など一部の地域では、都税事務所への一本化など提出先が異なる場合があります。
一人社長でも社会保険の手続きは必要?
会社を設立した場合には、税金だけでなく社会保険の手続きも極めて重要です。
法人事業所は、法律上原則として健康保険・厚生年金保険の「強制適用事業所」となります。
「従業員がいない一人社長だから社会保険には入らなくてもいい」というわけではありません。一人社長の株式会社であっても、役員報酬を受け取る代表者がいる場合には、原則として社会保険への加入が必要です。
健康保険・厚生年金保険 新規適用届
新しく社会保険の適用事業所となった場合には、「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を管轄の年金事務所へ提出します。
提出期限は、原則として事実発生(設立・事業開始)から5日以内と非常に短いため注意が必要です。
また、社会保険の被保険者となる役員や従業員について「被保険者資格取得届」も併せて提出します。
※無報酬の役員しかいない場合などは取扱いが異なります。判断に迷う場合は年金事務所や社会保険労務士へご相談ください。
従業員を雇った場合に必要な届出
従業員を雇う場合には、税務署や年金事務所だけでなく、労働基準監督署やハローワークへの手続きも必要になります。
① 労働保険 保険関係成立届
労働者を1名でも雇い、労働保険の保険関係が成立した場合は、原則として保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に「労働保険 保険関係成立届」を所轄の労働基準監督署へ提出します。
併せて、労働保険料の「概算保険料申告書」も提出します(こちらは原則50日以内)。
② 雇用保険適用事業所設置届
雇用保険の適用事業所となった場合は、「雇用保険適用事業所設置届」を所轄のハローワークへ提出します。
提出期限は、原則として事業所を設置した日の翌日から起算して10日以内です。対象となる従業員の「雇用保険被保険者資格取得届」も併せて提出します。
新設法人でも消費税が免税とは限らない
「新しく会社を作れば、最初の2年間は必ず消費税が免税になる」と思われている方も少なくありません。
しかし、新設法人だからといって必ず消費税が免税になるわけではありません。
⚠️ 設立初年度から課税事業者となる主なケース
- 資本金または出資金が1,000万円以上で設立した場合
- インボイス発行事業者の登録を受ける場合
- 「消費税課税事業者選択届出書」を提出した場合
- 親会社等の売上が一定規模を超える「特定新規設立法人」に該当する場合
特に、会社設立時にインボイス登録をするかどうかは極めて重要な経営判断です。
「取引先から求められたから」と安易に決めるのではなく、以下の要素を総合的に考慮して判断しましょう。
- 主な取引先が法人(課税事業者)か、個人(一般消費者)か
- 初年度・次年度の売上見込み
- 仕入れや外注費、経費の金額
- 設備投資の予定
新設法人の主な届出書類・期限一覧
ここまで解説した主な届出書類と提出先、提出期限の一覧です。
| 届出書名 | 提出先 | 主な期限 |
|---|---|---|
| 法人設立届出書 | 税務署 | 設立の日から2か月以内 |
| 青色申告の承認申請書 | 税務署 | 設立3か月経過日と第1期末の早い方の前日まで |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 開設から1か月以内 |
| 源泉所得税の納期の特例 | 税務署 | 随時(適用を受けたい前月まで) |
| 法人設立関係の届出 | 都道府県・市区町村 | 自治体による(概ね15日〜1か月以内) |
| 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 年金事務所 | 原則5日以内 |
| 労働保険 保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 原則10日以内 |
| 雇用保険適用事業所設置届 | ハローワーク | 原則10日以内 |
※必要な手続きや提出期限は、会社の設立日、決算期、資本金、役員報酬、従業員の有無などによって異なります。
新設法人で特に忘れたくない3つの重要手続き
会社設立後の届出は数多くありますが、特に早い段階で確認しておきたいのは次の3つです。
1. 青色申告の承認申請書
新設法人特有の期限(原則3か月以内等)があります。「最初の決算申告までに出せばいい」と思っていると期限切れになり、初年度の赤字繰越などができなくなります。
2. 社会保険(年金事務所)の手続き
一人社長でも役員報酬を受け取る場合は加入が義務です。役員報酬を決める際は、税金だけでなく社会保険料の会社負担分・個人負担分を含めてキャッシュフローを検討する必要があります。
3. 源泉所得税(納期の特例)
役員報酬を支給すると会社に源泉徴収・納付事務が発生します。小規模法人は「納期の特例」を申請することで、毎月の納付事務を年2回に集約できます。
会社設立直後は「届出」だけでなく役員報酬や消費税も重要
会社設立後は、単に届出書を提出すれば終わりではありません。設立直後には、次のような重要事項を一体で検討する必要があります。
- 役員報酬をいくらに設定するか
- 決算月をいつにするか
- 青色申告を利用するか
- インボイス登録をするか / 消費税の課税事業者になるか
- 社会保険料はトータルでいくらになるか
- 日々の経理・記帳をどのような体制で行うか
これらは別々の問題ではなく、密接に連動しています。
例えば、役員報酬の金額によって会社の法人税だけでなく、社長個人の所得税・住民税・社会保険料も変わります。また、インボイス登録の有無によって設立1年目から消費税の納税資金が必要になります。
会社設立後は、税金・社会保険・資金繰りをトータルで考えることが極めて重要です。
まとめ:会社設立後の届出は早めに確認しましょう
法人を設立した後は、税務署だけでなく地方自治体や年金事務所、労働局などへの各種手続きが必要です。
📌 特に期限が早い重要手続き
- 法人設立届出書(税務署:2か月以内)
- 青色申告の承認申請書(税務署:設立3か月等)
- 給与支払事務所等の開設届出書(税務署:1か月以内)
- 社会保険関係の届出(年金事務所:5日以内)
会社を設立したばかりの時期は、本業の営業準備、銀行口座の開設、契約書の整備などで非常に忙しくなり、税務や行政の手続きが後回しになりがちです。
会社を設立したら、まず「何を・どこへ・いつまでに提出するのか」を整理し、期限に遅れないよう計画的に進めましょう。
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会社設立後は、届出だけでなく、役員報酬・社会保険・消費税・インボイス・経理体制など、最初に決めておきたいことが数多くあります。
ふじはら会計事務所では、一人社長・小規模法人を中心に、新設法人の税務・会計をトータルサポートしています。
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