赤字でも会社のお金は出ていく|設立前に知っておきたい固定負担と資金繰り
⚠️ これから会社を設立する予定のあなたへ
「最初は赤字でも、利益が出なければ税金も負担もかからないはず」
──そう思い込んでいませんか?
結論から申し上げます。会社は赤字でも、毎月・毎年お金は確実に出ていきます。
法人税は利益にかかる税金なので、赤字ならゼロです。しかし、法人住民税の均等割や社会保険料、役員報酬、借入金の返済などは、売上や利益に関係なく発生する「固定負担」です。
特に危ないのが、設立直後の売上が計画を下回ったケースです。この記事では、赤字法人でも出ていく費用を資金繰りの視点で整理し、設立前の備えを解説します。

📌 この記事の目次
1. 「赤字なら負担ゼロ」は誤解|利益と手元資金は別物
法人税や法人事業税(所得割)は所得に課税されるため、赤字の年は原則として発生しません。「赤字なら負担ゼロ」という誤解はここから生まれます。
しかし、決算書上の赤字と通帳の残高は一致しません。たとえば借入金の元本返済は経費になりませんが、お金は毎月出ていきます。
固定負担とは:
売上の増減に関係なく、会社を維持しているだけで発生する支出のこと。本記事では経費(固定費)だけでなく、税金・社会保険料・借入金の返済も含めて考えます。
資金繰りで見るべきは「利益がいくらか」ではなく、「現金がいくら残るか」です。
2. 赤字法人でも出ていく6つの固定費・固定負担
会社が赤字でも発生する主な負担は、次の6つです。
| 負担の種類 | 赤字でも発生する理由・目安 |
|---|---|
| ① 法人住民税の均等割 | 所得ではなく「会社があること」に課税されます。資本金等1,000万円以下・従業者50人以下なら年約7万円が目安です。 ※税率は自治体により異なります |
| ② 社会保険料 | 社長1人の会社でも、役員報酬を支払えば原則加入です。保険料は利益ではなく報酬額で決まり、会社負担分は報酬の約15%前後です。 |
| ③ 役員報酬 | 税務上、原則として期首から3か月以内に決めた額を1年間同額で支払う必要があり、期中に自由には減らせません。 |
| ④ 消費税 | 利益ではなく売上をもとに計算します。インボイス登録などで課税事業者になると、赤字でも納税が発生します。 |
| ⑤ 家賃・税理士報酬・ソフト利用料など | 契約で金額が決まっており、売上が少ない月も同じだけかかります。 |
| ⑥ 借入金の元本返済 | 経費にはなりませんが、返済額がそのまま現金で出ていきます。 |
【2026年10月以降に設立する法人は消費税に要注意】
- 資本金1,000万円未満の新設法人は、原則として設立から最大2期は消費税の免税事業者です。ただし、インボイス登録をすると1期目から課税事業者になります
- 登録事業者の納税額を売上税額の2割に抑える「2割特例」は、令和8年9月30日を含む課税期間までの措置です。2026年10月以降に設立した法人は対象外で、個人事業者向けの「3割特例」も法人は使えません
※2026年10月の執筆時点の制度に基づいています。
3. 【ケース】設立直後の売上が計画の4割だったら?
具体的な数字で、会社の資金繰りを見てみましょう。よくある状況をもとにした架空のケースです。
【ケース概要】
個人事業から法人成りし、Web制作会社を設立したAさん(社長1人)。事業計画では月売上100万円を見込み、役員報酬を月30万円に設定しました。
ところが設立後に主要取引先の発注が減り、実際の売上は月40万円前後にとどまりました。
| 項目(月額) | 金額 |
|---|---|
| 売上(入金) | 40万円 |
| 役員報酬(額面) | ▲30万円 |
| 社会保険料(会社負担分・概算) | ▲4.5万円 |
| 外注費など(売上に連動) | ▲8万円 |
| 事務所家賃 | ▲5万円 |
| 税理士報酬・ソフト・通信費など | ▲3万円 |
| 均等割(年7万円の月割り) | ▲0.6万円 |
| 損益(決算書上の赤字) | ▲11.1万円 |
| 借入金の元本返済 | ▲5万円 |
| 手元資金の増減 | ▲16.1万円 |
決算書上の赤字は月約11万円ですが、通帳からは毎月約16万円が減っていきます。年間では約190万円の流出で、設立時の手元資金が300万円なら1年半あまりで底をつく計算です。インボイス登録をしていれば、ここに消費税の納付も加わります。
【社長個人の負担も見落とさない】
- 会社が赤字でも、役員報酬を受け取る社長個人には所得税・住民税がかかります
- 法人成りした場合、前年の個人事業の所得に対する住民税や国民健康保険料の支払いが設立後も続きます
4. 設立前にやっておきたい資金繰り対策3つ
① 役員報酬は「生活費から逆算」して控えめに
期中の減額は「経営状況の著しい悪化」などの事情がないと税務上認められにくく、単に業績目標に届かなかったことは理由にならないとされています(国税庁「No.5211 役員に対する給与」)。まずは控えめに設定し、実績を見て翌期に見直すのが安全です。
② 運転資金は「売上ゼロでも6か月」を目安に
固定負担の合計×6か月分を、設立時点で確保しておくと安心です。赤字の決算書が出た後は融資の審査も厳しくなりがちなので、創業融資は設立前後の早い段階で検討しましょう。
③ 青色申告の承認申請で赤字を将来に活かす
青色申告の法人は、赤字(欠損金)を最長10年繰り越して将来の黒字と相殺できます。申請期限は設立日から3か月を経過した日と1期目の末日のいずれか早い日の前日までです。
当事務所では設立前のご相談の際、「売上が計画の半分だったら何か月もつか」を資金繰り表で試算しておくことをおすすめしています。数字にしておくだけで、役員報酬や借入額の判断に迷いにくくなります。
5. 赤字法人の費用・資金繰りに関するよくある質問(FAQ)
Q. 赤字の年も法人税の申告は必要ですか?
赤字でも申告書の提出義務があり、均等割の納付もこの申告にあわせて行います。期限内の申告を2期続けて怠ると、青色申告の承認が取り消されるおそれがあります。
Q. 売上が少ない時期は、役員報酬をゼロにすればよいですか?
役員報酬がなければ原則として社会保険の対象外となり、会社の負担は減ります。一方、社長個人は国民健康保険・国民年金への加入が必要になり、収入もなくなります。報酬を決められる時期のルールにも注意しましょう。
6. まとめ:会社は「利益」ではなく「お金」で回っている
- 法人税は赤字ならゼロでも、均等割・社会保険料・役員報酬・借入返済などの固定負担は毎月発生する
- 決算書上の赤字よりも、手元資金の減り方のほうが大きくなることがある
- 設立前に「売上が計画を下回ったら何か月もつか」を試算し、役員報酬と運転資金を決めておく
個別の状況によって最適な役員報酬や資金計画は異なります。具体的な判断は、税理士などの専門家にご相談ください。
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