その支出、本当に会社の経費?一人法人が迷いやすい7項目をQ&Aで整理
⚠️ 一人社長・小規模法人の経営者の方へ
「ネットで『経費になる』と書いてあったから大丈夫」
──その判断、自社の使い方に当てはまっていますか?
「スマホ代は経費になりますか?」というご質問に、税理士の答えはたいてい「使い方次第です」。同じ支出でも、会社の事業のために使ったと説明できれば経費になり、説明できなければ経費になりません。
つまり大切なのは、○×一覧を覚えることではなく、「判断の軸」と「証拠の残し方」を身につけることです。この記事では、自宅・スマホ・PC・会食・出張・研修・サブスクという迷いやすい7つの支出を、実務の考え方に沿ってQ&Aで整理します。

📌 この記事の目次
1. 法人の経費は「どこまで」?判断の軸は3つ
会社の経費(税務上の「損金」)になるのは、事業に関連して生じた費用です。実務では、次の3つの軸で考えます。
損金(そんきん)とは:
法人税の計算で、利益から差し引くことができる費用。会計上の「費用」とほぼ重なるが、役員給与や交際費など、税務上は損金にできない部分がある。
| 判断の軸 | 自分に問いかける質問 |
|---|---|
| ① 事業との関連性 | 会社がなかったら、この支出をしていたか? |
| ② 金額・頻度の妥当性 | 同じ規模の会社として、常識的な金額・回数か? |
| ③ 説明できる証拠 | 1年後に、第三者へ目的を説明できる記録があるか? |
領収書は③の一部にすぎません。領収書が示すのは「お金を払った事実」だけで、「事業のために払った」ことまでは示してくれないからです。
2. 一人法人こそ要注意|経費にならない支出は「役員給与」になる
一人法人では「社長=会社」なので、公私の線引きがあいまいになりがちです。ここで知っておきたいのが、会社のお金で私的な支出をした場合の扱いです。
【私的な支出を会社が払うと…】
- 会社側:社長への「役員給与」とみなされ、毎月定額ではないため経費にならない
- 社長側:給与として所得税・住民税の対象になり、会社は源泉徴収漏れを指摘されることも
単に「経費から外れる」だけでなく、会社と個人の両方で税金がかかることがあります。「迷ったら会社で落としておく」は、一人法人ほど高くつくのです。
3. 【Q&A】迷いやすい7つの支出をどう考えるか
それぞれ「判断のポイント」と「残しておきたい証拠」をセットで整理します。
Q1. 自宅の家賃は、会社の経費にできる?
ポイントは「どの部分を、どの程度、会社が使っているか」。個人で借りている自宅の一部を事務所にするなら、面積割合など合理的な基準で会社と契約を結び、会社が家賃を払う方法があります。会社名義で借りて社宅にする場合は、国税庁が定める計算方法に基づく家賃を社長から受け取ることが前提です。社長個人の申告にも影響するため、始める前に確認しましょう。
📎 残す証拠:賃貸借契約書、按分の根拠(間取り図・面積のメモ)
Q2. 私用と兼ねているスマホ代は?
1台を仕事とプライベートで兼用しているなら、利用実態に応じた按分が基本です。会社名義で契約した業務専用の端末なら、全額を経費にしやすくなります。「仕事でも使っている」ではなく、「どのくらい使っているか」を示せるかが分かれ目です。
📎 残す証拠:契約書・請求書、按分割合の根拠(業務時間や通話明細など)
Q3. パソコンは全額その年の経費になる?
事業で使うなら経費になりますが、金額によって処理が変わります。10万円未満なら購入時に全額経費。青色申告の中小法人なら、2026年4月1日以後に取得したものは40万円未満まで一括で経費にできる特例(年合計300万円まで)があります。それを超えると、数年に分けて経費にします(減価償却)。家族が主に使うなど事業での利用実態がなければ、金額にかかわらず経費になりません。
📎 残す証拠:領収書・納品書、使用者と用途のメモ
Q4. 会食代はどこまで経費になる?
取引先との会食は「交際費」です。資本金1億円以下の法人なら、交際費は年800万円まで経費にできます。大事なのは金額よりも「誰と・何のために」。1人当たり1万円以下の飲食費は、日付・参加者・人数・店名などを記録すれば交際費の枠から外すこともできます。一方、社長1人や家族との食事は事業との関連を説明しにくく、原則として経費になりません。
📎 残す証拠:領収書+「相手の会社名・氏名・人数・目的」のメモ
Q5. 出張費や日当は?
業務のための交通費・宿泊費は経費になります。さらに「出張旅費規程」を作っておけば、規程に沿った日当を支払えます。日当は会社の経費になり、常識的な金額の範囲なら受け取った社長側も原則非課税です。観光を兼ねた日程や家族の同行分は、業務部分と分けて考えます。
📎 残す証拠:出張旅費規程、日程・訪問先・目的の記録、交通・宿泊の領収書
Q6. セミナーや研修の費用は?
判断の目安は「今の事業や、具体的に予定している事業に役立つか」。業務に必要な知識・技能のためのセミナー代や書籍代は経費になります。業務と関係の薄い趣味・教養の講座は、社長個人の支出とみなされやすくなります。
📎 残す証拠:申込書や案内(テーマがわかるもの)、受講後のメモ
Q7. サブスク(月額サービス)は?
会計ソフト、クラウドストレージ、生成AIツールなど業務で使うサービスは経費になります。動画・音楽配信などは私的な利用とみなされやすく、経費にするなら事業での利用目的を説明できることが前提です。家族と共有しているアカウントは特に注意しましょう。
📎 残す証拠:会社名義の契約・アカウント、利用目的のメモ
4. 証拠の残し方|「領収書だけ」では足りない
Q&Aの「残す証拠」は、次の4種類に整理できます。
| 残すもの | 示せること |
|---|---|
| 領収書・請求書 | お金を払った事実(日付・金額・支払先) |
| 目的のメモ | 事業のための支出であること 例:「〇〇社△△様と新規案件の打合せ(2名)」 |
| 契約書・社内規程 | ルールに沿った支出であること(賃貸借契約書、出張旅費規程など) |
| 利用の記録 | 実際に事業で使っていること(スケジュール、業務日報、利用履歴など) |
コツは、メモを支払ったその日に残すこと。クラウド会計なら、証憑の画像に一言コメントを付けるだけでも十分です。「あとでまとめて思い出す」は、たいてい思い出せません。
5. まとめ:「経費になるか」より「説明できるか」
法人の経費は、項目名で○×が決まるものではありません。事業との関連性・金額の妥当性・説明できる証拠の3つで判断し、証拠は「払った事実」と「目的」をセットで残すのが基本です。
税務調査で実際に問われるのは、「何を買ったか」よりも「なぜ会社のお金で払ったのか」です。日頃から一言メモと社内規程を整えておけば、その場で慌てずに説明できます。判断に迷う支出が出てきたときこそ、自社のルールを見直すよい機会です。
※本記事は2026年10月執筆時点の制度に基づく一般的な解説です。実際の判断にあたっては、個別の状況に応じて専門家にご相談ください。
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