ひとり社長の月次決算|毎月30分で確認したい経営数字
⚠️ 決算書を年に1回しか見ていないひとり社長のあなたへ
「会計は申告のための作業。会社の数字は、決算のときに税理士から聞けば十分」
──そう思っていませんか?
結論から申し上げます。月に一度、30分だけ自社の数字を確認する習慣があれば、「想定外の納税」や「気づいたら資金不足」はほぼ防げます。
一人法人では、営業も現場も経理も社長ひとりの仕事です。日々の業務に追われて帳簿は後回しになり、会社の成績を知るのは期末から2か月後の決算のとき……というケースは少なくありません。
しかし、決算書が出てきた時点で打てる手はほとんど残っていません。この記事では、ひとり社長でも無理なく続けられる「月次決算」の考え方と、毎月30分でチェックしたい6つの経営数字を解説します。

📌 この記事の目次
1. 決算書を年1回見るだけでは「手遅れ」になる理由
決算書が完成するのは、通常は期末から約2か月後です。年1回の決算だけに頼ると、期首の取引であれば1年以上前の数字を、後から知ることになります。
【よくあるケース】
コンサル業のひとり社長。通帳残高が少しずつ増えていたので「今年もこんなものだろう」と安心していました。
ところが決算を締めてみると想定の倍以上の利益が出ており、法人税等と消費税を合わせて約250万円の納付が必要になりました。
【結末】
手元資金では足りず、納税のために急きょ借入れを検討することに。期中に利益の伸びに気づいていれば、納税資金の積立てや決算前の対策など、打てる手はいくつもありました。
※ 説明のためのモデルケースです。
数字を後から知るほど、選べる選択肢は減っていきます。
2. ひとり社長の月次決算は「毎月30分の数字チェック」で十分
月次決算とは:
毎月の取引を締めて帳簿に反映させ、その月までの売上・利益・資金の状況を把握すること。法律上の義務ではなく、経営判断のために行う「社内の決算」です。
上場企業は毎月かなりの手間をかけて月次決算を行いますが、ひとり社長が同じことをする必要はありません。目指すのは「申告のための正確さ」ではなく「判断のための速さ」です。
細かい按分や1円単位の正確さは、決算で整えれば足ります。翌月の中旬までに、8割の精度で自社の数字が見られる状態をつくることが、会社の月次管理の第一歩です。
3. 毎月確認したい6つの経営数字
毎月チェックするのは、次の6項目だけで構いません。
| チェック項目 | 見るポイント | 要注意サイン |
|---|---|---|
| ① 売上高 | 前年同月・目標との比較、取引先ごとの内訳 | 3か月連続で減少/1社への依存が大きい |
| ② 粗利 | 売上から原価・外注費を引いた額と、その比率(粗利率) | 売上は伸びているのに粗利率が下がっている |
| ③ 固定費 | 役員報酬・家賃・通信費・サブスク・保険料など毎月かかる費用 | 使っていないサービスの支払い/じわじわ増加 |
| ④ 現預金残高 | 毎月の固定費の何か月分あるか | 固定費の3か月分を下回る |
| ⑤ 未収・未払 | 入金予定日を過ぎた売掛金、未払の経費・社会保険料・源泉所得税 | 入金遅れの放置/支払の積み残し |
| ⑥ 税金見込み | 法人税等・消費税の概算額 | 納税資金を確保していない |
【「通帳の残高=儲け」ではありません】
- 残高には、お客様から預かった消費税が含まれている
- 未払の経費や、半年分まとめて納める源泉所得税(納期の特例を受けている場合)が控えている
- 今期の利益に対する法人税等は、決算後にまとめて支払う
ひとり社長が本当に「使ってよいお金」は、ざっくり「現預金 − 未払金 − 税金見込み」です。この感覚を毎月持てるかどうかが、資金繰りの安定を大きく左右します。
4. 30分で終わらせる月次管理のルーティン
毎月の作業時間は「記帳の確認10分+数字チェック15分+メモ5分」が目安です。ひとり社長の経理を続けるコツは、次の3つです。
① 銀行・カードは会計ソフトと連携し、記帳を溜めない
クラウド会計の自動連携を使えば、入力の手間は大きく減ります。領収書や請求書も月末にまとめて処理し、翌月10日ごろには帳簿が締まる流れをつくりましょう。
② 毎月「同じ表」で、前月・前年同月と比べる
6つの数字を1枚の表に並べ、見る場所を固定します。単月の数字よりも「前と比べてどう変わったか」のほうが、ずっと多くのことを教えてくれます。
③ 数字の「理由」を一言メモしておく
「売上減は大型案件の端境期」「固定費増はPC購入」など、一言で十分です。決算時や税理士との打ち合わせ、翌年の計画づくりで大きな手がかりになります。
5. 月次の数字が「経営の武器」に変わる3つの場面
月次の数字がそろうと、会計は「申告のための作業」から「経営の判断材料」に変わります。特に効果が大きいのが次の3つの場面です。
| 場面 | 月次の数字があると |
|---|---|
| 役員報酬の決定 | 役員報酬は原則、事業年度開始から3か月以内に決めた額を1年間変えられません(定期同額給与)。前期の月次推移と今期の見込みがあれば、根拠をもって金額を設計できます。 |
| 決算前の対策 | 決算月の2〜3か月前に着地見込みが分かれば、設備投資のタイミングや納税資金の準備を前もって検討できます。決算月を過ぎてからでは、打てる手はほとんどありません。 |
| 融資・資金調達 | 金融機関からは直近の試算表を求められるのが一般的です。毎月締まっていればすぐに提出でき、「数字を把握している社長」として信頼にもつながります。 |
ひとり社長には、社内に相談できる相手がいません。だからこそ毎月の数字を「経営の相談相手」にしていただきたい、というのが私たちの考えです。
6. ひとり社長の月次決算に関するよくある質問(FAQ)
Q. 記帳を税理士に任せていても、月次決算はできますか?
年に1回まとめて資料を渡す方法では、期中の数字は見られません。通帳データや領収書を毎月共有し、月ごとに帳簿を締めてもらう体制にすれば、社長は数字のチェックに集中できます。
Q. 税金の見込みは、どうやって計算すればよいですか?
法人税・住民税・事業税をあわせて、利益のおおむね2〜3割強を目安に確保しておくと安心です。赤字でも法人住民税の均等割(最低でも年7万円程度)はかかり、消費税の課税事業者であれば消費税の納税分も別途必要です。また、前期の法人税額が20万円を超えると法人税の、前期の消費税額(国税分)が48万円を超えると消費税の中間申告・納付が必要になるため、資金繰りに組み込んでおきましょう。
※ 制度・金額は執筆時点(2026年10月)のものです。個別の試算は専門家にご相談ください。
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