個人事業主の車両費|仕事と私用で使う車の経費はどう按分する?
⚠️ 個人事業主の車両費、こう考えていませんか?
「仕事でも乗っているし、車の経費はだいたい半分くらいで計上しておけばいいだろう」
──その割合、根拠を説明できますか?
営業や顧客訪問、仕入れなどで自家用車を使っている方は少なくありません。個人事業主の車両費は、仕事とプライベートの両方で使う車であれば、業務で使った分だけを「家事按分」して経費にするのが基本です。
ところが実務では、按分割合の根拠となる記録がない、駐車場代や高速料金まで一律に按分している、といったケースがよく見られます。この記事では、車の利用記録のつけ方から按分の計算、駐車場・高速料金の記録方法まで、車両費の整理の仕方を順を追って解説します。

📌 この記事の目次
1. 自家用車の経費は「家事按分」が基本
仕事専用の車であれば、関連する費用は原則として全額が経費になります。一方、平日は仕事、休日は家族の買い物にも使う自家用車は、仕事とプライベートの両方にまたがる「家事関連費」にあたります。
家事按分とは:
仕事とプライベートの両方に使う支出のうち、業務に使った部分を合理的な基準で区分し、その部分だけを必要経費にすること。
国税庁も、家事関連費が必要経費になるのは取引の記録などに基づき、業務に直接必要だったことが明らかに区分できる部分に限られるとしています(国税庁「やさしい必要経費の知識」)。つまり、按分の正しさを支えるのは「記録」です。
2. 按分割合の決め方:走行距離・使用日数を記録で裏付ける
車の按分基準としてよく使われるのは、次の2つです。
| 按分基準 | 計算方法 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 走行距離 | 業務での走行距離 ÷ 年間の総走行距離 | 営業・訪問・配送など移動が多い人。最も説明しやすい基準です。 |
| 使用日数 | 業務で使った日数 ÷ 車を使った日数 | 「平日は仕事、休日は私用」と使い方がはっきり分かれている人。 |
どちらの基準でも、割合の根拠になるのは利用記録(運行記録)です。最低限、次の4項目を残しておきましょう。
- 日付
- 行き先と目的(訪問先名、仕入れ先名など)
- 走行距離(出発時・帰着時のメーター、または地図アプリの距離)
- 業務か私用かの区分
手書きの記録表でも、スマホのメモやカレンダーの予定に距離を書き足す形でもかまいません。当事務所で個人事業主の車両費を確認する際も、按分割合の高さそのものより「その割合を裏付ける記録があるか」を最初に確認しています。
3. 個人事業主の車両費に含まれる費用と「按分する費用・しない費用」
車にかかる費用はガソリン代だけではありません。ポイントは、車全体にかかる費用は按分し、1回ごとに業務か私用かを判断できる費用は按分しないという区別です。
| 費用 | 勘定科目の例 | 扱い |
|---|---|---|
| ガソリン代 | 車両費 | 按分する |
| 車検・修理・オイル交換・タイヤ | 車両費・修繕費 | 按分する |
| 自動車税・自動車重量税 | 租税公課 | 按分する |
| 自賠責保険・任意保険 | 損害保険料 | 按分する |
| 車両本体の購入代金 | 減価償却費 | 毎年の減価償却費を按分する |
| 自動車ローンの利息 | 利子割引料 | 按分する(元本の返済は経費にならない) |
| 自宅の月極駐車場 | 地代家賃 | 按分する |
| 訪問先のコインパーキング・業務移動の高速料金 | 旅費交通費 | 按分しない(業務分は全額) |
| 私用での駐車場代・高速料金 | ― | 経費にならない |
【見落としがちな注意点】
- 車の購入代金は一度に経費にできず、耐用年数(新車の普通自動車は6年、軽自動車は4年)にわたって減価償却します。
- 駐車違反やスピード違反の反則金・罰金は、業務中であっても経費になりません。
- 勘定科目は毎年同じものを使い、年によって処理を変えないようにしましょう。
4. 【計算例】走行距離で按分した場合の経費額
年間の総走行距離が10,000km、そのうち業務での走行が6,000kmだったケースで計算してみます(金額は説明用の例です)。
【按分割合】
6,000km ÷ 10,000km = 60%
【按分する費用】年間合計 990,000円
ガソリン代180,000円、保険料80,000円、車検・メンテナンス70,000円、自動車税等40,000円、減価償却費500,000円、自宅の月極駐車場120,000円
→ 990,000円 × 60% = 594,000円
【按分しない費用】業務分のみ 84,000円
訪問先のコインパーキング24,000円、業務移動の高速料金60,000円 → 84,000円(全額)
【経費になる金額】
594,000円 + 84,000円 = 678,000円
もし高速料金やコインパーキング代まで60%で按分していたら、本来全額経費にできる約3万4千円を取りこぼすことになります。逆に、私用の高速料金を混ぜて按分すると、経費の過大計上につながります。
5. 駐車場代・高速料金の記録方法
① 自宅の月極駐車場:契約書と支払記録を保存する
賃貸借契約書と口座振替・振込の記録を保存し、車両本体と同じ按分割合で経費にします。
② 訪問先のコインパーキング:領収書に「訪問先」をメモする
精算機の領収書の余白に、訪問先や目的を書き込んでおきます。領収書が出ない場合は、日付・場所・金額・目的を出金伝票やメモに残しましょう。
③ 高速料金:ETCカードを事業用と私用で分ける
事業用のETCカードを1枚決めておけば、カード明細や「ETC利用照会サービス」の利用明細がそのまま業務利用の記録になります。分けられない場合は、明細の業務分に訪問先を書き込み、私用分を除いて計上します。
これらの費用は「何割」ではなく「1件ずつ業務か私用か」で判断する費用です。記録さえあれば全額を経費にできますが、記録がなければ業務で使ったことを説明できません。
6. 個人事業主の車の経費に関するよくある質問(FAQ)
Q. 配偶者名義の車を仕事で使っています。経費にできますか?
無償で事業に使っている場合でも、その車の減価償却費や自動車税などのうち業務使用分は、事業主の必要経費になります。ガソリン代なども、事業主が負担した業務分が対象です。生計が別の親族の車は扱いが異なるため、専門家にご確認ください。
Q. 中古車を買った場合、耐用年数は何年になりますか?
簡便法では「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」で計算し、1年未満の端数は切り捨て、2年未満なら2年とします。例えば4年落ちの普通自動車なら(6-4)+4×20%=2.8年で、耐用年数は2年です。ここで計算した減価償却費も、按分の対象になります。
7. まとめ:個人事業主の車両費は「記録」で決まる
仕事にも私用にも使う車の経費は、次の3点を押さえれば整理できます。
- 走行距離などの利用記録で、按分割合の根拠を残す
- 車全体にかかる費用は按分し、駐車場代・高速料金は1件ずつ業務か私用かを判断する
- 車両本体は一度に経費にせず、減価償却する
記録は年の途中からでも始められます。今日の分から残しておけば、次の確定申告で按分割合を説明できるようになります。
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